皆さんは健康に関して関心はありますか?
自分は健康だから大丈夫と思っている方、昔から病気しがちで他の方よりは気を遣っている方など人様々だと思います。
病気というものは目に見えてわかるものと、そうではないものとあります。
そんな病気で筆者はある時入院をし、生と死の境界線を彷徨いかけた時がありました。
その時の体験を綴ろうと思います。
そして最後まで読んで頂きもしも、少しでも似たような苦しみが軽くなれば書いた甲斐があると言うものです。
目次
膠原病をご存じですか?発症・入院・治療と経験した実体験を語ります
皆さんは膠原病(こうげんびょう)ていう病気をご存知ですか?聞いた事がない方が圧倒的に多いのではないでしょうか?
膠原病とは?どんな病気なの?
膠原病とは1つの病気の名前ではなく、複数の病気の総称です。
例えるなら「日本(膠原病)には47都道府県(各病名)がある」というようなものでしょうか。
膠原病は「自己免疫疾患」、「リウマチ性疾患」、「結合組織疾患」の3つの病気が重り合った疾患です。
全身にある複数の臓器が炎症し、臓器の機能障害をもたらします。
膠原病の特徴
- 関節や筋肉が痛み、こわばりがある。
- 細胞の結合組織に炎症が見られ、病気が発症する。
- 免疫異常が見られる。
- 遺伝性がなく、伝染病ではない。
- 悪性腫瘍の病気ではない。
- 抗生物質が効かないが、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)は効果がある。
膠原病の特徴にはこのようなものがありますが、外見などで見ると普通の健常者(健康な人)とほとんど変わりはありません。
その為病気に罹っていると気付きづらいです。
膠原病の種類って?
膠原病は複数の病気から成っている疾患です。ここではいくつか膠原病の種類を紹介します。
膠原病の種類
・全身性エリテマトーデス(SLE)
何らかの原因で自分の細胞や組織に対して抗体ができ、自分の体の細胞に対して免疫機能が攻撃してしまいます。これが原因で多くの臓器で血管炎を起こす自己免疫性の病気です。
・全身性強皮症(PS)
全身性硬化症(SSc)とも呼ばれています。皮膚が次第に硬化してしまうのが特徴的な病気です。皮膚だけでなく、心臓や腎臓などといった内臓にも硬化が見られます。
・シェーグレン症候群(SjS)
目や口の中の粘膜が乾燥する自己免疫性の病気です。涙腺や唾液腺が炎症します。目の症状はいわゆるドライアイと言われていて、眼痛があったり眩しくて見えない状態があったり、口の症状はドライマウスと言われ、唾液の分泌が少くなります。
・ベーチェット病
目、口、皮膚粘膜、外陰部、血管など全身にわたって炎症が起きる病気です。
眼痛や眩しくて目が開けていられないというシェーグレン症候群のような症状や目が霞むなどといった症状が出ます。
・関節リウマチ(RA)
一般的に「リウマチ」と呼ばれている病気でこれも膠原病の1つです。
全身の関節、特に手や膝などといった日常でよく動かす関節の痛みや腫れが左右対称性に見られる病気です。
この病気は午前中に関節の痛みや腫れが強く、午後になるにつれ徐々に良くなってくるのが特徴です。
患者の数が多い為、難病特定疾患の指定は受けられません。
・リウマチ性多発筋痛症
50歳以上、特に60歳以上の人に起こりやすい原因不明の病気で、首や肩の周辺部、腰部、臀部などにこわばりや痛みを伴う炎症性の病気です。
因みに「リウマチ」という言葉が含まれていますが、「関節リウマチ」とは全く別の病気です。
ほんの一部だけを紹介しましたが、実際はもっと種類が多いです。
一般的にいうリウマチも実は膠原病の1つで、身近な所にも存在している病気なのです。
筆者が罹ったのは全身性エリテマトーデスという病気でした。
全身性エリテマトーデスって?
先程「膠原病の種類」で説明しましたが、全身性エリテマトーデスは自己免疫疾患です。
英語では「systemic lupus erythematosus」と呼び、頭文字を取って通称「SLE」と呼ばれます。
全身性エリテマトーデスの名前の由来
systemicは、全身の様々な臓器などに多彩な症状を引き起こす事を指しており、全身という意味です。
lupus erythematosusは皮膚に出来る発疹が、狼に噛まれた痕のような赤い紅斑であることから名付けられました。
因みにlupus(ループス)はラテン語で狼の意味があります。
病気の原因
世界的に病気の研究が行われていますが、現段階ではまだ原因が分かっていません。
病気の誘因
病気のきっかけになるもの(誘因)がいくつかあるとされています。
紫外線(海水浴、日光浴など)、ウイルス感染(風邪など)、怪我、外科手術、妊娠・出産などが誘因として考えられています。
この病気の患者
日本全国には約6~10万人程いると考えられいます。
難病の申請をしている方は約6万人(2013年)ですが、申請をしていない方を含めると倍はいるのではないかと推測されています。
男女比は1:9と言われていて、女性に多い病気です。
すべての年齢に発症しますが、子供を産むことの出来る年齢、特に20〜40歳の女性に多いと言われています。
病気の症状
全身症状、皮膚や関節症状が見られます。更に、様々な内臓、血管の病気が加わりますが、人によって症状の組み合わせは違います。
①全身症状
発熱、全身倦怠感、疲労感、食欲不振などが見られます。
②関節症状
関節炎(手や指)を起こします。また、日によって場所が変わる移動性の関節炎が見られることもあります。
③皮膚症状
蝶型紅斑(バタフライ・ラッシュ)と呼ばれる頬に蝶が羽を広げている様な形の赤い発疹ができます。
他にもディスコイド疹(レコード盤みたいなディスク状の形)がこの病気の特徴的な症状で、顔面や耳介、頭部、関節背面などにできます。
④日光過敏症
強い紫外線(夏場など)に当たった後、皮膚に赤い発疹、水膨れ、あるいは熱が出るといった症状です。
⑤口内炎
口の奥や頬にあたる部位、上顎側に出来たりします。
これは粘膜面が凹んだものですが、痛みが無い事が多く自分で気付きづらいです。
⑥髪の毛などの脱毛
朝起きた時、枕にたくさん髪の毛が付いていたりします。
更に円形脱毛みたいに部分的に髪の毛が抜けたり、髪の量が全体的に減ったりする事もあります。また、髪が痛みやすくなっています。
⑦臓器障害
全ての症状が起こるわけではなく、人それぞれ症状や障害される臓器の数が違います。
全く障害の無い軽症の方もいます。特に腎臓(ループス腎炎)、血液異常、神経精神症状、心病変などは生命に関わる障害になる事があるので注意が必要です。
この病気の治療法
主に投薬治療をします。
- 「副腎皮質ステロイド」
- 「免疫抑制薬」
- 「抗凝固療法」
などを錠剤で服用します。
因みによく皮膚科で処方されるステロイド外用薬とほぼ一緒です。
自分自身に対する免疫を抑える為、免疫抑制効果のある副腎皮質ステロイドを使います。
現時点では無くてはならない薬として知られていて、自分の意思で服用を止める事は出来ません。
他には「ステロイドパルス療法」という副腎皮質ステロイドを、点滴で大量に使用する方法です。
これはかなり重症度が高い方に使われます。
症状が重篤化している場合は、「支持療法」や「対症療法」と言って腎不全の時の透析療法などの治療が行われます。
また血行障害の強い方は、血管拡張薬などが使われます。
この病気の予後
この病気は完治することが難しく、症状が現れなくなったからといって完治した事にはなりません。
症状が出なくなり落ち着いてる場合は「寛解(かんかい)」と言われており、数ヵ月後、数年後にまた症状が現れる場合を「再燃(さいねん)」と言います。
しかしきちんと投薬治療などを行えば再燃するリスクは減ります。
その為きちんと病気と向き合い、根気強く治療する事が大切です。
なかなか知られていない病名ですが「全身性エリテマトーデス」と聞くともしかしたら聞いた事がある方もいるかもしれません。
過去には「ディア・シスター(2014年)」で女優の石原さとみさんが演じた深沢美咲がこの病気に患っているという設定がありました。
最近の新しい記憶で言えば女優や歌手として活躍しているセレーナ・ゴメスさんでしょうか。
2017年9月に腎臓移植の手術を受けたというニュースを見た方も多いかと思います。
なぜ膠原病になったの?発症した経緯
実を言うと何故この病気に罹ったのかわかりません。何故かと言うと原因不明の病気だからです。
最初の異変 「脚のむくみ」
筆者が一番最初に違和感に気付いたのは脚のむくみでした。
接客業をしている関係上どうしても立ち仕事が多くなるので脚はむくみやすくなります。
その為仕事が終わって家に帰ってからは脚のマッサージをなるべくやるよう心掛けていました。
ある時、マッサージをしてもむくみが取れなくなってきました。それどころかつま先の辺りまで水風船みたいにむくむようになりました。
普段パンプスを履いて仕事をしていたのですが徐々に履きづらくなっていきました。
むくみが良くならず心配になったのでかかりつけの個人病院に通いましたが、結果はわからず。
この時エステに通って脚をマッサージしてもらったり、着圧ストッキングを履いたりと対策をしましたが全て効果はありませんでした。
2つ目の異変 「微熱が続く」
そしてむくみの次は微熱が続くようになりました。
病院に行って血液検査をしてもやはり原因は分からず解熱剤をもらいましたがこれも良くならず。
このような不調がずっと続いていた為仕事にも影響が出始めました。何故かはわかりませんが、ほんの5分前の事を全然覚えていなかったり、注意されているのに何を言われているか理解できないなどと不調が続きました。
最後の異変 「血液異常」
そして通院を始めて2ヶ月程経ったある日。体が怠くて仕事も出来なかった為、早退して病院に行き再度血液検査をしました。
すると医師からは「状態が良くないから大きい病院(大学附属病院)に紹介状を書く」と言われました。
そしてその日の午後、大学附属病院から「すぐに緊急入院して下さい」と電話がありました。
緊急入院・病気名の判明
電話で言われてパニックになりましたがその日のうちに入院しました。
検査入院という名目で2週間程の入院予定でしたが入院してから2日後、担当して下さった医師から聞いた言葉は「あと2週間放っておいたら死んでいた」でした。
状態はそこまで悪化して、入院も2ヶ月〜~4ヶ月必要との事でした。
そして病気もそこで判明しました。病目は「膠原病 全身性エリテマトーデス」でした。
治療と入院生活
入院期間
入院は2ヶ月半という長期入院でした。2ヶ月半と言っても長い方は4ヶ月入院するそうなのでそれと比べると短い期間だったのだと思います。
治療方法
治療は主に投薬治療や点滴でした。
血液検査は毎朝行い、容態が良くなかった入院当初は朝6時に採血を行っていました。
血液を採る本数もかなり多く、検査項目も多い事から12本くらいでした。看護師さんの話によると通常の人の採血だとだいたい2〜3本だそうです。
今現在は6本ほどなので倍近くありました。
入院生活について
入院初日は大人数部屋(7人部屋)が空いてなかったので個室になりました。
金銭的な話になりますが大人数部屋より個室は高いらしいです。その分気を遣わなくて済みますが。
個室には1週間程居たのですが、最初に尿道カテーテルを着けられました。
これはどんなものかというと汚い話になってしまいますが、おしっこをするのが困難な人に膀胱に管を通して導尿をするというものです。
先生の話だと女性より男性のほうが痛いそうです。筆者は女性ですがかなり痛かったし、何より気持ち悪いというか不快感が凄くありました。
この時は寝たきり状態でしたが動いても動かなくても気持ち悪い状態でしたが、3日程して取れたので良かったです。
カテーテルが取れて程なくして大人数部屋に移ったのですが、全身性エリテマトーデスが前にも述べたように日光過敏症がある関係上窓際のベッドはNGでした。
基本的に窓がある方はカーテンを閉めっぱなしにしていました。
同じ膠原病の人は同室に2人いましたが、どちらの人も筆者の病気とは違いました。
因みに1人の方は筆者とは2回りくらい年齢が違いましたが、入院時期もほぼ一緒で退院日も1日しか変わらなかったです。
この方はシェーグレン症候群とガンを患っていました。
退院が近づくにつれて良くなっていましたが、入院当初は飲み物や点滴のみでお粥ですら食べられない状態でした。
いつも「ごはんが食べたい」と言っていたのを今でも覚えています。
基本的に治療で入院している方は採血、各治療(点滴や食事療法)、検査などをしながら生活します。
筆者も心電図やレントゲンなどの検査、点滴などをしながら入院生活を送っていました。
こんな入院生活で大変な事ばかりでしたが、楽しい事もありました。
家族や友達がお見舞いに来てくれたのももちろんですが、何より同じ病室の方々が支えてくれたのが大きかったです。
状態が良い方(検査入院だけで入院している方もいます)は申請すれば外出許可が出るのですが、筆者は病気の関係上常に酸素をつけていなければいけなかったので外出許可が出ませんでした。
許可を得て外出した方からお土産をもらったり、同じ病室の方からりんごやケーキをもらった事もありました。
入院当時23歳だったので結構可愛がられていました。
このような方達が居たおかげで入院生活も楽しめました。人付き合いが苦手な筆者ですが、仲間外れにされる事もなく良くしてくれたので今でも感謝しています。
今後の生活について
この病気は今の時点では完治する事がありません。
ですが、治らないからと言って悲観的になるのは良くない事です。
入院中に学んだ事があり、それは「マイナス思考にならない事」です。
これは入院中に出会った方で別の病室の方だったのですが、この方がかなりのプラス思考の持ち主でした。
ご高齢の方だったのですが、お孫さんの誕生日までには退院するとずっと言っていたおかげか退院予定日より2ヶ月ほどの早く退院していきました。これには本当に驚きました。
逆に同室にいたマイナス思考の方(全てを看護師さんのせいにしていた)は逆に退院予定日を過ぎても退院出来ませんでした。
「病は気から」という言葉は本当にあると実感したのでマイナスに考えず、なるべく物事はプラスに考えてポジティブに生きていこうと思います。
治療について
治療については生きている限りずっと続けていかなくてはいけません。
毎日の投薬治療と食事制限が病気を良くする為の1番最善な方法なので、これらを守りつつ定期的に通院を続けていきます。
食事制限については人にもよりますが、筆者はたんぱく質、塩分、糖分などの分量の制限や薬の関係で食べてはいけない物(納豆やグレープフルーツなど)があるので食事には気をつけているつもりです。
治療も楽ではありませんが、1つ1つを気をつけていけば再燃のリスクは下がるので諦めずにやっていこうと思います。
仕事について
病気にかかっている方なら直面するであろう仕事についてですが、筆者は今現在も仕事を続けています。
何の仕事かというと入院前と同様接客業をしています。
よく「膠原病は立ち仕事が出来るのか?」というような質問を目にします。
確かに筆者も退院する時、主治医に「仕事は疲れやすく、ストレスも溜まるから本当はしないほうが良い」と言われました。
ですが「体調に応じてやっても良い」と許可をもらったので変わらず仕事をしています。
そうは言ってもドクターストップがかかっているものもあるので出来る範囲で仕事をこなしています。
立ち仕事をするのも病状によりきりですが、立ち仕事が不安ならデスクワークなどでも良いと思います。
それにどうしても立ち仕事をしたいならやはり主治医と相談しましょう。
どんなにインターネット上で質問して答えが返ってきたとしても、あくまで「同じ様な病気や経験をした方」の意見であり病状も重さも違います。
アドバイスとして参考にするのは構いませんが、万が一自分の身に何かあっても誰も責任は取れませんので注意が必要です。
最後に
なかなか聞く機会のない病気でしたが、こんな病気があるというのを知ってもらえれば幸いです。
筆者は入院はしたものの、ニュースなどを見ていると「自分はまだ良いほうだな」と感じます。
最初の辺りでも伝えましたが、2017年9月にはセレーナ・ゴメスさんが腎臓移植をしています。
腎臓移植をするという事はかなり重症だったはずです。彼女は病気を公表する前、ゴシップ紙で「プライベートなどが原因で太ったのでは!?」と囁かれていたようですが、いくら周りが周知していなかったとはいえ嫌だったろうなと感じます。
彼女が病気を公表した時、筆者は丁度入院中でしかも年齢も同い年だと知りました。
同じ年齢で同じ病気を患っている方が活躍しているのは本当に凄いなと感じています。
病気だから出来ないのではなく、病気をしてハンデを負っている分頑張って不可能を可能にしているんだろうなと思います。
もし周りに病気をしている方がいたら「病人だから出来ない」と思わず手を貸してあげて下さい。
もし自分が病気をしているのであれば「病人だから出来ない」と考えるのではなく「少しくらいなら出来る」と考えてみて下さい。
何事も出来ないと思えばその通り、出来なくなります。逆に出来ると思えば不思議と出来るようになります。
生きていく事は簡単ではありませんが、明けない夜はありません。少しずつでも前に進んで行きましょう。
(記事:nightmare03th)