注意!
- 涙もろい人はハンカチではなくタオル推奨。
- 人のいるところでは読まない、顔がくしゃくしゃになり涙が止まらなくなります。
- 電車やバスでは乗り過ごしに注意。
- 睡眠不足になります。
- 人恋しくなります。
- 切なくなります。
- やりきれなくなることもあります。
- 朝起きた時、瞼が腫れているでしょう。
- 化粧のノリも悪くなるかも知れません。
- 仕事中次のページが気になり、集中できないかも知れません。
- ・・・・・
- でも人にやさしくなるかも知れません。
そして、最後はきっと・・・
読んで良かったとあなたは思うでしょう。
目次
おすすめ恋愛小説、切なくて泣けて感動する厳選ベスト50!(学生~大人)
~50
50. 夏のバスプール (畑野智美)
<第23回 小説すばる新人賞受賞作>
※(リンク先はAmazonです)
高校生の夏の恋愛を描いた長編で、学生・20代が主に共感できる内容です
「THE 青春」という言葉がぴったり!
高校時代は、まっすぐで、くるしくて、自分がなんだかわからなくて、まぶしくて、面倒くさくて、言葉ではあらわせないことばかり。
しかし、表すのが難しい高校生というものが、この本には鮮明に生き生きと表現されています。
もう一度高校時代に戻りたいと思う一冊です。
49. 冷静と情熱のあいだ-Rosso (江國香織)
<第20回 ゴールデングロス賞 優秀銀賞を受賞した作品>
「人の居場所なんてね、誰かの胸の中にしかないのよ」
この言葉がとても印象に残る、イタリアを舞台にした長編。
10年も前の約束、あの子がまだ僕のことを好きでいるはずがない・・・
しかし僕の頭の中には、学生時代にあの子が言った「わたしの30歳の誕生日に、フィレンツェのドゥオーモのクーポラで会ってね。約束してね。」という言葉が常にあった…
大人の恋愛を、イタリアの街が彩るように切なく甘い雰囲気がたまりません!
48. 恋愛小説(捓月美智子)
恋人がいるのに他の異性とセックスをする若者たちの話。
性描写が苦手な方には少しお勧めできないかも…
しかしそこには、お互いが好きすぎて、自分の気持ちをうまくコントロールできない年齢だから別れざるを得ない二人の切ない物語があります。
長編であるが、性別、年齢問わずに手にとってもらいたい一冊。
47. クジラの彼 (有川浩)
自衛隊員の恋愛を描いた六つの短編小説集。
その中でもクジラの彼は、潜水艦乗組員の男と、普通のOLの話。
航海スケジュールそのものが機密の潜水艦。その上、航海中は連絡が不可能で、航海は三か月が当たり前。
潜水艦乗りの彼氏を持てば、次にいつ会えるかも分からず、ひたすら待たねばならない。
そんな状態で彼女には、会社の直属上司で社長のバカ息子がやたらとモーションをかけていました。
男は「海の底」の主要人物でもあり、番外編となっています
自衛隊を舞台とした短編集なので、年齢、性別を問わず読めると思います。
46. さみしさの周波数 (乙一)
<4つの短編を収録した短編集>
中でもこの2つは映画化もされています。
「手を握る泥棒の話」
友人と腕時計を作る「俺」しかし上手くいかず、悪事に手を染めます。
旅館の壁に空けた穴はしかし、予想外にも穴の向こうの少女と手を握り合うことに・・・
未遂に終わった犯行はしかし、奇妙な因果で事業の成功につながります。
ささくれた気持ちで悪事を働こうとして、結果的にいい話で終わるエピローグまで含めると、「ローマの休日」を感じさせられます。
「失はれる物語」
<とある夫婦の物語>
交通事故でほぼ植物状態になった夫だが、腕の感触だけ残り、人差し指だけが動く。
暗闇の中で交わされるのは、僅かに残された表現手段を用いての夫婦のコミュニケーション・・・
しかし、終わりは来る。
いや、終わらせねばならない時が来る。
ごめんなさいと、ありがとうの少し悲しい、ちょっとしたミステリー。
短編は少し大人向けの話が多いです。
45. わたしの恋人 (藤野恵美)
彼女いない歴=年齢、高校1年生の龍樹は、保健室で出会った女の子の「くちゅんっ」というくしゃみに恋をした。
「そんなに可愛いなんて、反則だろ…」
その少女,森せつなは,両親の喧嘩が絶えない家庭の状況から,恋愛に希望を持てないでいます。
「本物のわたしを知ったら彼は幻滅するかも」
龍樹のまっすぐな気持ちを受け,交際を始めたせつなは,自分と彼の考え方の違いに戸惑い,傷つき,悩んで……二人の出した答えは…?
主人公カップルそれぞれの視点で物語が進みます。
家庭環境が対照的な二人が、そこを分かり合っていくストーリーで、ストレスなく私は読めました。
学生の恋愛物語なので、どんな年代の方でも読んでもらいやすいと思います。
44. 燃えつきるまで (唯川恵)
怜子は5年付き合った耕一郎にふられてしまいます。
チーフ職に就く自立した女性が彼の前で取り乱しストーカー行為にまで及びます・・・
いき過ぎた心情によって、執着し、転げ落ちていく展開はまさにホラー!
しかしそれは、怜子にとってはかけがえのない日々があり、彼が生活の一部だった故
「時間をかけて考えるって、やっぱり必要だもの。ちゃんと苦しんだり、傷ついておかなければいけない時があると思う。」
最後まで読んだとき、この言葉の意味に納得します。
自分の生活の中で恋をする、これは大人向け間違いなしです。
43. 恋愛中毒 (山本文緒)
<恋愛小説の最高傑作である「恋愛中毒」>
吉川英次文学新人賞を受賞した山本文緒さんの作品。
上質な恋愛小説であると同時に、一級のホラーサスペンス小説でもあります。
感情移入していた人物が、物語のなかで徐々に自分の想像の範囲の外へ逸脱していく感覚が何とも言えません。
彼女は語られる経験のなかで変化していったわけではなく、彼女は最初から中毒であったのだ!
そして最後まで中毒であり続ける・・・
中毒、誰もが、そうなったら、そうなるのかもと考えさせられます。
それは歳をとっても、男でも女でも。
読み終わったときに、始まりに気づき、ねっとりした驚きと、一瞬の恐怖・・・
共感する部分は少なくても、自分にとって完全な他人事とは言い切れない、と感じさせられます。
これは若いときに一回、歳をとってからもう一度読み返すのが、一番楽しめる読み方ではないでしょうか。
42. 君と会えたから… (喜多川泰)
人生で約束されているただ一つの事は死ぬ事です。
当たり前の事だが、深く考える人はそうは多くないでしょう。
確かに、大抵の人には明日があるが、明日があるかわからない人もいます。
今を精一杯生きる事の大切さや、夢を叶える為になすべき事はなにかを、語り掛けてくるような、生きるという事の難しさと尊さを改めて痛感させられます。
「いつ死ぬかわからない」と言いながらも、誰もが明日があることを前提に生きてしまう・・・
「欲しいものを手に入れるためにお金を払っているのではない。それに携わった人に、『ありがとう』を届けているのだ。」
心に刺さる言葉がたくさん出てきます。
「死を考える」とは「生を考えること」
改めて訴えかけてくる一冊です。
内容は難しくはないので、年齢、性別関係なくたくさんの人に読んで欲しいです。
41. 東京タワー (江國香織)
2人の男子大学生が一回り以上年上の女性と不倫な関係になる話。
2人のタイプが静と動タイプで真逆な気もするけど、自覚がありながらその女性との恋愛にハマる一方、ハマらないとタカをくくってもズンズンハマっていくもう一方・・・
結局どちらもハマりにハマって、ドンドン深みに潜っていきます思い通りにいかない恋、ただ愛しい人と一緒にいたいという想い。
どこか爽やかとも思える話です。
映画化もされていますが、そちらはそれなりの修羅場があった分、小説の方があっさりと綺麗な印象です。
不倫の話ではありますが、純粋な恋物語という感じが強いので若い方でも読みやすいと思います。
~40
40. 図書館戦争 (有川浩)
図書館戦争シリーズ 文庫 全6巻完結セット (角川文庫) 文庫
「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」
かの有名な人気シリーズ。
「お父さんお母さんお元気ですか。念願の図書館に採用されて私は今、毎日軍事訓練に励んでいます」
最初ののんびりした内容から急に突然、怒号や銃声が鳴り響く文体がかっこいい!
ぶっ飛んだ図書館武装化世界も、甘酸っぱいほのかなラブ要素も、戦う男たちのかっこよさもつぼにはまる人は多いのではないでしょうか。
堂上と郁の上下関係との過去には、にやにやが止まりません。
事実を郁が知る日が楽しみです。
個人的にはこの正論を巡る考え方がとても興味深かったです。
「正論は、優しくない」
所々に出てくるずしりと重みのある言葉は、この小説をさらに濃くしているのではないでしょうか。
SFのような恋愛小説ですが、年齢を問わず読んで欲しい一冊です。
39. 美丘 (石田衣良)
自分に正直に生きる美丘と、そうではない太一。
ふたりが出会った頃では、時間の重みの差がだいぶあったのだと読了後に気づきます。
時の流れとともに甘く、悲しく、強くなる愛の美しさを感じました。
よくある誰かが死ぬ物語では「どうせ泣かしてくるんでしょ」と思っても、そんな思惑を感じさせない、自然な物語です。
また、比喩表現も面白いです。
「命は火のついた導火線で、ためらっている余裕など本来誰にもないはずなのだ」
なかなか普段は気付かず生きているが、寿命のこと。悲しい話ですが、とても心に響きました。
あと、この本の表紙はドキっと、させられますが美しいなぁと感じました。
年齢、性別を問わず手に取りやすいのではないでしょうか。
38. 天使の卵–エンジェルス・エッグ (村山由佳)
天使の卵 エンジェルス・エッグ 天使の卵シリーズ (集英社文庫) Kindle版
<20年で幕を落としたシリーズの中の一冊>
シリーズは単体としても十分感動できる話となっていますが、出来れば順番に読んで頂けると感動が深まります。
精神に支障をきたしてしまった父親を中心に、少年から青年への変容を交えながら家族との距離感と、異性との距離感を不器用ながらも感じながら成長していく話。
主人公の歯がゆさを感じながらも等身大の生を感じさせてくれます。
物語は生年と一人の精神科医との出会いから始まります。
明らかに年上の女性に淡い恋心を募らせながらも、父親の病気を目の当たりにして、いつか自分もこうなるのではないかという恐怖の中で、父親が入院する病棟で恋心を募らせる年上の女性との再会をはたします。
しかし、年上の女性はかつての彼女の姉だったり、父親の担当の先生になったり、若いころ一度結婚をしていて、芸術家の旦那さんが自殺したりと、とにかく障害が多い恋が始まるのですが・・・
お互いに惹かれ合いながらも、父親の死であったり、母親の再婚、元カノである彼女の妹にばれてしまったりと、短期間で目まぐるしく変わる環境にすれ違い、傷つき、新しい命とともに永遠の別れを経験しなければならない主人公とともに号泣する事間違いないです。
成人の方にはお勧めの恋愛小説です。
37. あなたには帰る家がある(山本文緒)
狭い世界すぎ!と思うけれど、セリフには自分が言ってもおかしくない言葉の数々・・・ドキッとさせられます。
好きになった人も過去に付き合った人もみんな優しかったなぁと思い出したら、昔の秀明と重なり恥ずかしさと同時になぜか泣きそうになりました…
でも、本当に優しい人は最後の最後であの人だった。
「何もかも捨てていい」ただし「人にしたことは、自分に返ってくるのだ」
恋愛物は胸ヤケするという人でも、やっぱり良いと感じてもらえると思う一冊です。
不倫や浮気といったテーマはどうも敬遠するという人にもお勧めします。
36. ブルーもしくはブルー (山本文緒)
最初はありえない世界の話として読んでいても、だんだん引き込まれていく物語です。
物語が進むにつれ予想とは異なる展開になり、ドキドキしながら読むことがでます。
誰もがちらっとは考えたことがあるであろう、人生における他の選択肢。あの時別の道を選んでいたら…
人生においてそんなことを考えることもあるかもしれません。
しかし、どちらを選んでも結局その道を自分が歩むことに変わりはありません、自分の環境を変えるには、自分で行動を起こすしかない。
私は私、選んだ道を精一杯全うするしか幸せになる方法はないのだろう、と感じました。
これは人生について考えさせられる一冊、年齢、性別問わず読んで欲しいです。
35. 1ポンドの悲しみ (石田衣良)
恋愛の短編集ですが、恋愛以外の要素にも心ときめきます。
ブランドの高価な美しい万年筆を集めて、自分好みの色のインクを入れる。
同じポストカードに書く文字も、コンビニのボールペンとは一味違う。
花屋の美しい女性と会話するために、週末に毎回違う花束を買いにいく。
毎週違った色の花びらが部屋にあるのがとてもいい。
本屋さんで、互いの好きな本のコーナーを紹介する。
工学系の専門書を見せる男性と、植物のイラスト図鑑を見せる女性。
30代前半のおしゃれを、たくさん感じることができます。
20代~30代の人にはぜひ読んで欲しい物語ばかりの一冊です。
34. みんないってしまう (山本文緒)
短い短編集ではあるけれど、すっとそれぞれに物語の中に入っていきやすいです。
あとがきの「時折以前持っていた物を思い出す事がある…自分から手放したのだが」は、共感する人も多いのではないでしょうか。
昔自分から手放した物や人の懐かしさを、苦さと共に思い出しました。
女性たちの、仕事絡みだったり、時には恋愛絡みだったりの、いろいろな状況に対する心情が描かれています。
登場人物たちが少々えげつなかったり、しつこかったり、本音丸出しだったり…きれい事ではないところがいい、と思える内容です。
結末がはっきりしない話が多くて少し不満に思う方もいるかもしれませんが、これぞ読み手の取り方次第ということかもしれませんね。
33. 世界の中心で、愛をさけぶ (片山恭一)
恋人の死というよくあるパターンですが、やはり死を悟ったときというものは涙しそうになります…
愛する人が亡くなり、どう考え、どう受け入れていくかがとても丁寧に描かれています。
「この世界には始まりと終わりがある。その両端にアキがいる。それだけで充分な気がした。」
この考え方、とても素敵ですよね!
私はもし大切な人を失った時、この言葉を思い出したいと思いました。
死別の悲しみは分からなくても、人を思う気持ちの儚さは分かります。
あんなに愛していたのに、あんなに大好きだったのに、別れがあんなに辛かったのに、悲しかったはずなのに、今は何も感じない・・・
現実の出来事か夢なのかも分からない、忘れたわけではないけれど死別の悲しみにも人を思う気持ちの儚さにも、涙します。
これは、愛する人がいる人もいない人にも、一度は読んで欲しい一冊です。
32. よだかの片想い (島本理生)
「もし無理すれば違う自分になれるんじゃないかと思っているなら 、その幻想は捨てたほうがいいかもしれません。そのほうが、君はきっと成長できる。たしかに人は変わることもある。しかし違う人間にはなれない。それは神の領分です。」
最後に教授からアイコに言った言葉がとても印象に残ります。
表紙からは想像もつかない切ない恋愛の話。
「一緒にいるっていうのは、相手を肯定しながら、同じ場所にいることなんだからさ。それは立派な理由だし、責任だ。」
この言葉は少し心に刺さりました。
年齢関係なく読んで欲しいのですが、年齢を重ねた方が心に響くように思います。
歳を重ねてから、ふとした時に読んで欲しい一冊です。
31. ラブコメ今昔 (有川浩)
有川さんの得意とする自衛隊を舞台とする、または自衛官が登場する、とても甘くて照れてしまうようなお話の短編集です。
ただ甘いだけではなく、必ずグッとくる箇所があるのが有川さんの作風。
今作は、読者が恥ずかしくなるくらいの胸キュンベタベタのラブストーリー6編です。
自衛隊員の仕事に対する真摯な姿勢や考え方、それを支える妻・家族の強さも随所にちりばめられ、感動が増幅します。
登場人物が少し不器用で真っ直ぐなところがかっこよく、思わず応援したくなります。
涙あり感動あり、ドキドキハラハラありの一冊です。
年齢は若い目の方にお勧めですが、有川ファンの方たちはもちろん、性別も関係なく沢山の方に読んで欲しいです。
~30
30. きみはポラリス (三浦しをん)
<今まで書かれた短編をまとめた本>
前半と後半で真逆の明暗の短編集です。
相手を想う心は様々、
相手を想う気持ちは、誰にしろ、どんな気持ちにしろ、実に沢山の形があることに気づかされる内容です。
私は中学生の時に初めて読んで、その時にはピンとこなくて流し読みしてしまいました。
しかし、ふと読み返したくなって読んでみたら、こんな作品だったのか!といい意味で裏切られました。
歳を重ねたら重ねただけ、感じ方が変わりそうな一冊です。
時々、ハッとするような部分もあり、ここに出てくる人たちみたいにごちゃごちゃ考えずに恋愛したいなぁと思いました。
私の経験でいくと、これは大人の人向けのような気がします。
しかし、若いときに読んでも何か感じることはあると思うので、一度手に取ることをお勧めします!
29. 真夜中の五分前 (本多孝好)
真夜中の五分前―five minutes to tomorrow side-A―(新潮文庫) Kindle版
「世界は不必要なもので溢れ返っているし、不必要なものは人を醜くするんだ」
そんなことを言うITビジネスで大儲けした、被虐的な男に見込まれてしまう主人公。
仕事はできるし女にもモテます。
濃い影がちらつくあたりはレトロな雰囲気。
見かけはジャニーズふうでも、内面は違うんだよボクはさぁ、と悶々する主人公の入り組んだ屈折が独特の「side-A」
「side-B」はヒロインが卵性双生児の姉妹をめぐるある事件後の話。
真夜中の五分前―five minutes to tomorrow side-B―(新潮文庫) Kindle版
「主人公は26歳、広告代理店勤務」
その上、ヘッドハンティングされた周りが敵ばかりの女性上司のお気に入りの部下であり、取り返しがつかないくらい女性を取り替えると噂される彼は、この業界ですら面と向かって「俺はお前が好きじゃない」と言われる男です。
そんな彼の実態は…side–Aでは双子の一人、かすみとやっと愛を掴んだかにみえます。
Bはその2年後、「信じられないのは自分?それとも君?」という予想外の展開になります。
人間の感情の中でも最も不可解な恋愛感情、何故確信を持てる?信じられる?常々疑問を持っている・・・
そんな恋愛に懐疑的な方にこそ読んで頂きたいです。
本当の気持ちを奥深くにしまい込んで、自分でも見失ってしまった主人公が一つの答えに辿り着く・・・
もちろんそれとて確実なものではないです。
でも愛を叫べない人間が、愛を否定している訳でも求めていない訳でもない。
最後に女性をミューズのようにも魔女のようにも描いた本作は本当に面白い作品です。
これは大人の方に、できれば男性に読んで頂きたいです。
28. 白いしるし (西加奈子)
主人公は夏目という32歳の女性、アルバイトをしながら絵を描いています。
彼女が、友人の瀬田に招かれて「間島」という男の個展へ行くところから、ストーリーは展開していきます。
間島の作品である、白で描かれた富士を見たとき、夏目は恋に落ちると直感します。
自分の多色を鮮やかに塗り込めた作品とは真逆の、白い光を放つキャンバスの前に立ちつくし、それ以外は目に入りません。
間島は26歳で、全身黒づくめの服を着て、アメリカの強い煙草を絶え間なく吸っています。
夏目には、間島の何もかもが魅力的でした。
しかし、夏目は恋に落ちないように、自分に言い聞かせていました。
何故なら、彼女は過去、高校生の頃から激しい恋愛を続け、失恋を繰り返しており、もう二度とそんな思いはしたくないと決めていたからです。
しかも初めに、瀬田から間島には彼女がいると知らされています。
しかし、それを知っていても尚、夏目は間島に魅かれ続け、二人の関係は始まってしまいます。
間島の「恋人」には触れないまま・・・
お互い好きなのに離れなくてはならない。
狂気じみた行動も間島が本当に好きだから忘れたくない為。奪いたくても彼には忘れられない人がいて。読むたびに胸が苦しくなる内容。
それでもなぜか何度も手に取ってしまう一冊です、これは年齢も、性別も関係なく読んで欲しいです。
27. 100回泣くこと (中村航)
結婚の約束をするも、彼女に卵巣ガンが見つかったカップル。
結婚の練習といって同棲し、家で結婚式ごっこをしたりして…少しかわいいカップルのやり取りも読めます。
バイクや図面関係の仕事に関して、専門用語満載ですが、それも読みどころの一つではないでしょうか。
命あるものは必ずなくなる、 頭では分かっていてもなかなか受け入れられないのが現実、残された家族の辛さが現実的です。
人が亡くなるということは、本当に悲しいことで、それが親しい人であればあるほど大きい、それがよく分かる一冊です。
「ここが頂点でもいいな…あとは登ることじゃなくて、まっすぐ進むことを考えればいい」
恋が順調なときの気分に気づかされます。
「好きな人が望むなら、まぬけなことなんて、無駄なんて、きっとこの世に1つもない」という島本さんの解説が好きです。
これは、大切な人がいる人なら、涙する事間違いなしです!
26. レインツリーの国 (有川浩)
図書館シリーズの中で登場する書籍「レインツリーの国」を現実に書籍化したもの。
内容は難聴のひとみと伸の恋愛モノなのだが、一言で難聴と表現した自分は何も知らないと実感させられます。
もし自分の周りにひとみのような知人がいたらどんな態度をとるだろう?普通の友達として関われるだろうか?
ともし今後の人生でそのような人と関わるような事があれば本作を思い出すのだろうなぁと思いました。
とは言っても、伸もひとみも誰でも何かしら傷やハンデを負っているんですよね。
そんな2人がどう距離を縮めていくのか、ハラハラドキドキします。
たまに荒々しく感じることもあるけど、本音でひとみにぶつかっていった伸。
彼が発した「仲直りするためにケンカしよう」という言葉は、思ってもみない考えでなんて、優しくて冷静でなんてまっすぐな人なのだろうと思いました。
私も毎日発する言葉を大事にしたいと再認識させられた本です。
間違いなく誰かとちゃんと向き合いたくなる一冊です。
求め過ぎたり、傷つけたり、解って欲しいが故に感情を超える程の酷い言葉になったり…
そんな事を避けたくて人と無難な距離を保ちたくなるけど、諦めないで向き合いたいと思える相手が存在するなら凄く幸せな事だと感じます。
熱く、しかしさっぱりとした恋愛小説なので、沢山の人に読んで欲しいと思っています。
25. ぼくは愛を証明しようと思う。 (藤沢数希)
誠実で真面目な弁理士なのに、意中の女性とは上手くいかない主人公。
ぼくは愛を証明しようと思う。 (幻冬舎単行本)Kindle版
そんな主人公が、息をするようにモテるナンパの達人と出会い、「恋愛工学」の指南を受けることで、多数の恋愛を経験して恋愛上級者に成長し、最後は意外な結末を迎える恋愛小説です。
恋愛工学とは、著者の専門の金融工学の考え方を基にして、統計学や心理学を恋愛に応用することで、ナンパの成功率を高められるという理論です。
理論立てられた恋愛工学ですが、会話が多いので読みやすいと思います。
ナンパのノウハウ本かと思うと、選ばれるのは男の方で、女性を喜ばせ、楽しませ、選んでもらうための努力が恋愛工学だと、調子に乗った主人公を達人がたしなめる場面もあります。
試してみたいけど、ここまでモテるようになるには凄まじい勇気と実践が必要なのだろうなと思いました…
(笑)
男にはある種のファンタジーとして、女だったらこんな男に引っかかってたまるのかと面白がれる一冊ではないでしょうか。
24. イニシエーション・ラブ (乾くるみ)
side-Aは、ちょっと盛り上がりに欠ける恋愛小説という印象。
終盤までは「なんだ、普通の恋愛小説じゃん…」と思いながら読んでいたが最後の2行でゾワッとします。
side-Bに入って途中から私自身に芽生える奇妙な気持ち悪さと、嫌悪感・・・
最後に、そういう事かと納得しました。
A面B面とはそういうことだったのか!と気づかされます。
最後の2行パッと見て意味がイマイチわからなくても、解説の最後の行を読むとゾワゾワと謎が解けるはずです。
こんなタイプの小説は数少ないので、読後感は凄まじい爽快感に覆われるのではないでしょうか。
年齢、性別問わず、爽快感は感じられると思います。
23. 流れ星が消えないうちに (橋本紡)
キラキラとタイトルのような綺麗な物語。
読んでいて甘く、そして切なくなりました。大切な人を亡くした後の喪失と再生の爽やかで優しい恋愛小説
恋人を突然の事故で亡くした悲しみに葛藤する奈緒子と、彼女を見守る巧くん。
若さゆえの繊細さや一途さで、動けなくなり立ち止まることもあるけれど、若いからこそ、必ず歩き出す時がくる。
そんな気持ちのかわり時がきれいに描かれとても清々しい話でした。
繊細で丁寧な文が一層あたたかみを強めています。
私は文化祭のプラネタリウムの告白から続く後夜祭のダンスのシーンが好きです。
登場人物みんなの愛とか優しさが滲み出ていて、とっても温かい感じがします。
読み終えると、ぴったりなタイトルだなぁ…と思えるはずです。
切なくもあり、あたたかくもある…ねっとりした恋愛小説が苦手な方には、特におすすめです!
22. 絶対泣かない (山本文緒)
様々な職種の女性たちが 仕事と自分自身と向き合い、葛藤したり安堵したり、何かに気づいて進んでいく短編集。
仕事って、働くって何?という漠然とした疑問へのアンサーストーリーのようなもの。
生きるには働くことが必要で、しんどくて何故働くのかと思う時もあるけれど、それでも仕事をして生活ができるということは幸せ、という事を感じさせてくれます。
何百、何万という仕事が世の中にはあって、そのおかげで世の中は回っています。
いわゆる社会の歯車になっている感じを味わうこともあるけれど、その中で少しでも自分らしく働くことを続けていれば、働く自分というのを少しずつ描いていくことができる。
自分はどうだろう、と考えさせられました。働くことが億劫になったり、働く理由を見失いかけたりしたら、またこの本を開こうともう一冊です。
最後にある手相観の人のエッセイにも、元気がもらえます。
働く人には、深い物語ではないでしょうか。
21. マディソン郡の橋 (ロバート・ジェームズ・ウォラー)
旦那と子供が4日間出かけている間の不倫物語です。
途中でメリルがどんどん嵌まっていってしまい、イーストウッドも嗾けてしまいますが、最後にメリルの方で歯止めをかけるのがなんとも言えません。
映画でも有名な雨の中での車のシーンは何度観ても、読んでも泣けてきます。
この作品の中で唯一といってもいいほどホッとするシーンだからかもしれませんが…
家族の留守中に、夫婦のベッドで夫以外の男性と関係を持つなど、やっていることは許される事ではありませんが、全体として切ない雰囲気にまとまっているのは、読んでいて少し癖になってしまいます。
バックミラーにネックレスをかけて、最後のチャンスを与え、諦めて去って行くシーンが好きです。
結婚してから、素敵な人に出会ってしまう…そんな人には共感できるかもしれませんね。
これは言うまでもなく、大人向けの作品です。
~20
20. いちご同盟 (三田誠広)
死ぬってあっけない、生きるって難しい。
心と体のバランスが不安定な15歳の時に生と死について考えるのは非常に刺激の強い事だと思います。
ただ、生きたくても叶わない人や人間のあっけない死を側で見ることによって、自分は生かされている事や、命の大切さに気付ければ、大きくプラスのエネルギーを与えてくれるでしょう。
ピアノを弾くのは楽しい。でも、音楽の道に進むかどうか決められない少年は、近所で起こった自殺を機に死に魅せられ、しかし間近に死を迎える少女との出逢いが、その心にさざなみを立てます。
結んだ同盟は15(いちご)同盟。このときのこの想いを、100歳まで生きても忘れない。
いちごのように甘酸っぱい作品です。
友情と恋愛の青春小説だが密かに顔を覗かせる兄弟愛がまた心地よいです。
若い人、主に学生には一度は読んで欲しいです。年齢を重ねてからも読みたくなる作品だと思います。
19. 黄色い目の魚 (佐藤多佳子)
絵を描くこと、絵を見ること、絵を通して繋がっている村田さんと木島くん。
生き方が不器用な2人が、絵をとおしてつながっていく様子が繊細に描書かれています。
また、2人が少しずつお互いを特別に意識していく様子が、とても可愛くて・・・青春です。
はっきりとした輪郭を持って存在している人間なんていなくて、みんないろんな感情を内に抱きながら生きている。
でもそんな中で、村田さんと木島くんみたいに、お互いをただ1人の人だと自覚できるってすごい、と思いました。
自分のしてしまったことも含めて、全てを受け入れて村田さんのところに走った木島くんは、とてもかっこいいです。
恋人じゃないのにどこか特別な2人。ピュアで、不器用な二人、お互いに好きなのに好きと言えません。
逆に喧嘩したり、相手に嫌なことを言ったりします。
しかし、悟はついに告白します。
- 好きだと言ってもらえる喜び
- 好きだと言って喜んでもらえる幸せ
悟とみのりが、出会ったのは、奇跡だし、出会う運命だったのかもしれません。
ピュアな、恋愛物語。
若い人が読んでも、大人が読んでも、きゅんとする物語です。
18. ぼくの小鳥ちゃん (江國香織)
ある日僕の部屋に小鳥が舞い込んできて、一緒に暮らすようになる絵本。
小鳥ちゃんは鳥ではあるけれど、自由だけど自由ゆえに寂しい女性というか、しっかりした女性のような、本当に魅力的で、こんなふうに生きたいなと思いました。
小鳥ちゃんが小鳥じゃなかったら、僕と彼女とギッスギスの三角関係だったのかなあ、なんて少し思ったりします。
階下の老夫婦との件で「あなたの知らない一面もあるのよ」感を漂わせるのも魅力的です。
ここにいる目的も分からないけれど、今となっては小鳥ちゃんのいない日々が考えられないくらいに、僕の日常にすっかり溶け込んでしまいます。
明るさと哀しみが共存しているような不思議な感じです。
ほっこりしつつ、でもどこか切ないような、それもとびきりキュートな物語です。
挿絵がとてもかわいいです。
これは年齢関係なく、気軽に読めると思うのでお勧めです。
17. ツ、イ、ラ、ク (姫野カヲルコ)
小学2年から中学2年まで、隼子を中心としたその年代特有の異性への関心を描いた物語。
先生と生徒の恋愛小説なので、全てその通りとはいえないものの、その頃の気持ちを思い出させてくれるところも多々あります。
小中学校の子どもたちの世界や、多少おませな隼子の妄想と孤独と恋。
大人っぽくて魅力的だろうけど,かなり個性的です。
そして洋楽や外国映画,近くに無い世界に惹かれるのに共感する人も多いのではないでしょうか。
まさに墜落というタイトルにふさわしい内容とスピード感があります。
人が愛し合うのに、堕ちてゆくのに、時間なんて必要ないということに気付かされます。
視点が次々に代わり、独特の文章でもあり、若干の読みにくさはあるかもしれません。
それでも最後まで読めば、あ、やっぱり泣きたいほどの恋愛小説だったのだと思うはずです。
若い人にお勧めの内容な気がします。
16. 号泣する準備はできていた (江國香織)
関係が壊れかけたときの、どうしようもない時を切り取ったような短編集です。
直木賞も受賞した作品です。
誰かと出逢えば、付き合えば、情事を交わせば、別れがある。
また、永遠に結ばれたと思っても、すれ違いや気持ちが冷めることもある。
悲しいけれど、悲しいからこそ号泣する準備が必要なのかもしれないと思いました。
登場人物たちの空回りも諦めもなぜか分かるような気がして、失うかも、と思ったときからもう号泣に向けて準備ははじまっているのだなあと切なくなります。
と言っても登場人物は成熟した30代以上の男女ばかりで甘酸っぱさは欠片もないです。
恋愛に幻想を抱く純情が過ぎ去った年齢の諦念に近い大人的、抑鬱的な感じ方、考え方清さとは程遠い実際的な人間模様。
これらを鋭く捉え、繊細な表現によって、昇華していて不貞さえも綺麗に感じさせられます。
「美しく表現された全く美しくないもの」という印象を受けるところもあります。
10年20年経ってからもう一度読み返した時、どのように思うのかが楽しみな本です。
15. プラナリア (山本文緒)
様々な事情で無職の境遇にある少しやさぐれてしまった女性を主人公・登場人物にした短編集です。
みんな心の傷や闇を抱えているけど、それでもたくましく生きていって欲しいなと思います。
仕事をしていないことが、彼女たちの精神にすごく影響を与えていて、今仕事があってもちょっとしたきっかけで自分もこんな風になってしまうのかも…
ある時何かのきっかけで、感情が爆発するのかと読んでいて少し怖くなりました。
各短編の心模様、無職であり、ある意味縛られるものはないけれど、ある意味一番縛られている様などうなっても人間生きていくのは難しい。
みんなそれぞれ心の闇と孤独を抱えていて、もがいたり受け入れたりして生きているというのを感じられます。
途中やりきれない気持ちにもなるが、最後にはそれぞれの回答があり、アクションを起こすのですっきりします!
女性にはもちろん、働く人にも、これから働く人にも読んで欲しい一冊です。
14. 陽だまりの彼女 (越谷オサム)
偶然再会した、素敵になった訳あり同級生との恋愛。
どこにでもある恋愛小説という印象ですが、最後の最後で急にファンタジーになります。
ただ最後まで読むと、伏線が色んな場面で出ていたことに気づけます。
真緒の浩介への愛が素敵だなぁと思います。
春の陽だまりのようなぽかぽかとした、心がまるくなるようなほっこりするような柔らかい雰囲気が、二人の物語を包んでいるようで、なんだか憧れます。
「二人で思い描いたり、願ったり 望んだり、祈ったりすれば 叶うかもしれないね。そしたら僕たちにできないことなど、何ひとつなくなるよ」
こんなことを言い合いながら大好きな人と過ごせたら、きっと幸せだろうなぁと思いました。
甘えたりすれ違ったり思いやったりの2人の様子は実直でかわいらしいし、娘を思う両親もあたたかい。
誰かを好きになるって、切なさもあるけど、素敵なことなのだと改めて思いました。
若い人、恋をしている人には読んで欲しいです。
13. おいしいコーヒーのいれ方 (村山由佳)
キスまでの距離 おいしいコーヒーのいれ方 I (集英社文庫) Kindle版
私はコーヒーが好きなので、名前だけで手にしました。
しかし読んでみたらこのコーヒー、随分甘い!(笑)
ありきたりで、現実ではありえないようなラブストーリーです。
しかし、やっぱりコーヒー・・・
甘いばかりではないところも、この作品の読みどころの一つです。
作者は女性ですが、男性の心理描写がとてもリアルに描かれているなぁと感じました。
ショーリ君の大人ぶった男の子の心情は、身に覚えがありすぎて、少し笑ってしまうような、恥ずかしくなるような感じさえしまいます。
コーヒーでも飲みながらパラパラとページをめくると、日々の喧噪からほんの少し離れた、甘い一時を楽しめるかもしれませんね。
12. ストーリー・セラー (有川浩)
小説家である妻と、それを見守り支える心優しい夫との、生死にかかわるなんだかとても切なくない話が二つあり、Side:A/Side:Bと表記されています。
最後まで読むと、この書き方の素晴らしさが良く分かるはずです。
side-Aは少女漫画の様です。
Aでは、ちょっと気恥ずかしくなるような、甘い言葉にニヤリとしながらも、妻が書く手紙にうるっときました
しかし、彼女の猫が剥げた姿と、彼に言い寄られているときの姿が同一人物とは、何度読んでも思えません。
Bでは、主人公の強さや仕事に対する真剣な姿に惹かれます。
「死に損ない」の言葉にさえポジティブなんですよね!
二人の旦那様のような人がいたら、有能な女性の政治家や芸術家にもってこいだろうなと思ってしまいます。
作家になりたいとか作家に恋愛感情持ったことはありませんが、作家を支えたいと思う夫に感情移入してしまいます。
これまでの有川作品に比べるとベタ甘具合が中途半端な気もしましたが、介護の話や、生死にまつわる話など、否応無く引き込まされました。
大切な人にはきちんと伝えなければと思わされる一冊です、誰が読んでも面白いと感じる作品ではないでしょうか。
11. 百瀬、こっちを向いて。 (中田永一)
恋愛短編が4話収録されています。
ラブストーリーだけど、甘ったるいほんわかものではなく、クールというか、さっぱりしているというか、胸が締め付けられるような思いはほとんどありません。
途中で謎解きのような展開になるので、ラブストーリーにみせた推理モノのような感じです。
表題作も良いけれど、最後の「小梅が通る」が個人的には好きです。
人の外見では判断するな、と心がけていても、ついイケメン相手だとにこやかにしてしまいますよね…綺麗可愛い顔していることの苦労は、男にも同じような悩みだと思います。
しかし、女子のそれの方が大変に思えました。
友情が生まれるところは、読んだ人が皆安心した、安心すると思います。
こんなにユーモア溢れる人間なら人気出そう、と思うくらい会話がどのお話も面白いです。
さらに皆劣等感は強いけど実はとても純粋な心の持ち主で、ちゃんと幸せになるラストは、そういう人が報われてほしいなと思うので読んでいて気持ちいいです。
ほのぼのしたい方にはお勧めです!
~10
10.阪急電車 (有川浩)
阪急電車、今津線を舞台に各、駅ごとに主人公がバトンタッチしていく連作短編。
完全な読み切りでなく、登場人物がうまい具合に重なっていて、全部の短編を通しての1冊、とすごくうまく構成されています。
とても楽しく読みやすく、あっという間に読めてしまします。
折り返しが、またその人たちのちょっと先のお話っていうのもすごく楽しいです。
各話、そう長くはないのにしっかりと引き込まれるストーリーがあります。
1日何万人と言う人を乗せる電車にはその数だけ人生があってドラマがあります。
電車が恋のきっかけとなる場合も、もちろんあるでしょう。
有川浩らしい甘い恋愛描写もしっかりあります。
決していい人だけが登場せず、時に人生に悩み、他の人とずれたりしながらも人との触れ合いでそれぞれ方向を見つけていく・・・
たまたま同じ電車に乗り合わせた人たちに起こる素敵なハプニング、伏線もそれぞれ綺麗に回収されスッキリ、爽快!
とても楽しく軽快で小気味良い読了感があり、優しい気持ちになります。
読んでいてほのぼのとしたり、スカッとしたり、恋模様に気恥ずかしくなったりと、沢山の登場人物達がそれぞれの物語を展開して飽きません。
きっとこの路線に馴染みのある人は、もっと楽しめると思います!
人は自分で結論を出していてもポンっと背中を押して欲しいものかもしれません。
今勇気が欲しい、という人にはお勧めです、背中を押してもらえるかもしれもせんよ!
9. きいろいゾウ (西加奈子)
ムコとツマの夫婦成長譚。
売れない小説家とツマの田舎暮らしののほほんとした話と思いきや、途中からは、登校拒否の3年男子のツマへの初恋、ムコの昔の恋人への出奔など、波乱含みに。
優しさの中にも残酷で非情な現実も描こうとしているし、長い年月の関係性や色んな過去を乗り越えた人々、また問題を棚上げにしている様子までを、描こうとしている心意気がとても感じ取れます。
「きっといつかは 君のパパも 分かってくれる」
ムコがバックコーラス3人と歌うそれは、大昔に流行ったキングトーンズのグッナイベイビーこれを読んでから聞くと、初めて聞いた時とは違う気持ちになりました。
氏が今読み返したら赤面モノなのかもしれませんが、3作目にしてこの話を描こうとした氏に拍手を送りたい!という人は多いのではないでしょうか。
8. 植物図鑑 (有川浩)
植物大好きイケメンを拾ったOLの話、行き倒れていたイツキを拾ったさやか。
身近な植物に詳しい彼との生活を経て様々な植物と丁寧な暮らしを知っていきます。
道端にある雑草が、こんなに素敵な料理に変身するとは…、と味を想像しながら読み進めて行くと、お話しはラブストーリーへ。
植物も好きで、野草、朝食、恋愛、ほのぼのとした大人の恋愛の定番ストーリー、という感じでしょうか。
ベタですが、まんまとキュンとさせられました。
あっさりしているけど、深い恋愛もの、という感じもあります。
すんなり体に入ってくる感じで、想像がしやすい感情の書き方なので、小説初心者でもいいかもしれません。
ちなみに、この本を読むと、家事をちゃんとやろう、花や草の名前を少し覚えよう、なんて思ってしまいます。
7. 僕の好きな人が良く眠れますように (中村航)
僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)Kindle版
「―僕の好きな人が、よく眠れますように。いつの日も、これからどんなことがあっても、健やかに眠れますように。」
大学院生の人妻と僕の切ない恋愛小説。
院生と人妻研究員の恋愛。
1年間限定で来た研究員は人妻でした。
春に出会い、夏に恋に落ち、秋にそれは深まり、いつしか冬に。
大晦日、山田は紅白で白が勝ったら北海道へ行くと決めますが、白は負けます。
しかし、山田の気持ちは固まっていました。
どうしようもなく溢れてくる愛しさに泣きたい気分になる夜は、僕の好きな人が哀しまないようによく眠れるように願いを込める。
彼女にこれからどんなことがあっても健やかに眠れますようにと・・・
そして、彼女と新しい握手をするために北海道へと向かいます。
決着をつけに。
二人の未来は、妹の彼氏の浮気を「一度きりの間違いということで許す」といった時点で予想がつきます。
すまきとかふわふわドームとか、それからの二人が可愛いです。
たまたま好きな人が、人妻だったのかも知れない。
相思相愛になったとしても、その想いが止められなくても、一歩を踏み出せば、何倍も辛い別れが待っているのに・・・
始めない辛さより何倍も後引く辛さが待っているだろうに。
しかし、つらい恋愛のはずなのにものすごく楽しそうです。
北海道の夫のことなんか忘れてしまっているかのようだけど、あえて口にしないということはいつも気にしているともいえますよね。
作品自体は、言葉の使い方やテンポが心地良く読みやすいです。
純粋バカ大人木戸さんの存在も良いです!
やはり最後はきっちりと、必ず訪れる結末まで見せて欲しい!という人には少し物足りないかもしれません。
6. 君の膵臓が食べたい (住野よる)
明るく元気で屈託のない桜良と、彼女に触発されるように自分を見つけていった「君」
そんな高校2年生の「僕」のクラスメイトの桜良は、膵臓の病で1年以内に死ぬことがほぼ決まっています。
そのことを知っているのは家族以外では「僕」のみ。
しまし、ふたりの会話がなんとも瑞々しく、桜良が病気であることなんて全く感じさせません。
偶然秘密を共有することになった「僕」と桜良の関係は恋人でもなく友人というわけでもなく、でもお互いをとても大切と思う関係になっていき・・・
でもふたりを結びつけたきっかけがそれだったなんて。
しかも、彼女があんなことになるなんて…
二人のやり取りが穏やかでほっこり、ずっとこのままでいればいいのに…と引き込まれます。
「君」と恭子が新しい一歩を踏み出し、ふたりのこれからを応援したいと思いました。
バリバリの「ぼっち」な僕と社交的な桜良のかけあいにほのぼのし、徐々に変わっていくふたりに結末が気になり一気読み。
しかし、そうなるのかー、とショック大という人は多いのではないでしょうか。
ベタな感動話ではなく、でも泣けます。恋愛や友情という言葉に縛られない、 お互い人として尊敬して惹かれ合うって、なんて素敵なのでしょう。
本当に素敵な物語です。
TOP5
5. 博士の愛した数式 (小川洋子)
交通事故の後遺症で、それ以降のことを80分しか記憶できない数学博士と、彼のお世話をする家政婦の物語です。
彼女はシングルマザーで、10歳になる息子を育てていますが、それを聞いた博士が一人にしておくのは心もとないと、彼女と一緒に来るように進言したことから、3人の物語になります。
息子と博士は、数学と野球を通じて心を通わせていきますが、翌日来ると「君の誕生日は?」から始めないといけません。
そんな3人が心を通じ合う様は、とても愛おしいです。
なぜ博士が子供を溺愛するのか、確信に至る描写もなく謎はありますが、記憶がなくなっても博士の愛は残り続けています。
博士の言葉の誠実さ、数字のもつ美しい世界を語る姿が愛おしく、主人公とその息子の関わりの中でそれを存分に感じられるはずです。
普段、目にする数字は、時間だったり、ここに記す文字数だったり、様々なものが世の中に溢れています。
数字に限らず、私たちは何かを見聞きするたびに、記憶に刻まれて、自分だけに特別なものが増えていきますよね。
それらが、博士の授業に一度かかると、特別なものになっていきます。
そんな日々を送れるといいなという、心地になるわけです。
博士が自分のことを過小評価しすぎる、と家政婦が言って認めてくれる人がいるって幸せだと思いました。
純文学としての美しさを持ちつつ、物語は先へ先へと読ませる優しい文体です。
第一回の本屋大賞作品だけあって名作だという確信が最初の数ページであります。
タイトルの通り数式がたくさん出てくる話ですが、それ以上に博士の人柄と子供が登場してからの物語の進み具合は面白いです。
これも素敵な本ですたくさんの人に本当に読んで欲しい一冊です。
4. 夜は短し歩けよ乙女 (森見登美彦)
黒髪の乙女と、私のラブコメ。
青春、初!異性とお付き合いを始める手前ストーリー。
黒髪の乙女は、行動が豪快で大胆でありながら、他人への思いやりも溢れる魅力的な女性であるが、恋には無頓着。
恋に悩む先輩は、じれったいぐらいの外堀埋め作業から次の行動に移れない。
そんなおかしな2人の恋物語がほのぼのします。
二話の核となる京都の夜の街と学園祭の描写が秀逸です。
若い頃、学生の頃しか出来ない馬鹿げた生活を思いっきりデフォルメしており、その馬鹿馬鹿しさに快哉を送ってしまう自分がいました。
恋愛に臆病な私が必死に外堀を埋めていく描写は正直共感できるし、それでも最後は前向きに黒髪の乙女に積極的に行動する姿に感動しました。
人の視点をいったりきたりするのが面白いです。
途中の恋愛とは何なのかという問いかけが、かなり核心をついたことを言っており、ドキッとしました。
文体に独特の修飾語や、「なむなむ!」「ぽてぽて」「お友達パンチ」などユニークな表現、いきなり飛んでくる「莞爾に笑う」や「韜晦」「燎原の火」などやや難しめの言葉に少し戸惑うかもしれません。
しかし、こういう荒唐無稽なファンタジーを作ってしまった著者に思わず脱帽すること間違いなしです。
3. コーヒーと恋愛 (獅子文六)
これも、コーヒーという文字に引き寄せられ、手に取った一冊です。
コーヒーをいれるのが得意な女優・坂井モエ子とコーヒーを愛する面々たちのドタバタ喜劇。
恋愛成就には男性の胃袋をつかめとよく聞くが、モエ子はその失敗例です。
男等の胃袋はつかんでいるけれど、寄ってくるのはコーヒー目当ての偏屈者ばかり。
勉君と寄りを戻すのかと思いきや、モエ子はそれを振り切って清々しくヨーロッパへ・・・
あんなだらしの無い男とはキッパリ別れて正解ですかね!
菅とのロマンスが泡となって消えたのは残念な気もするけど、でも彼女に主婦という座は似合わない気もするので、これで良かったのかもしれません。
ラストは痛快です。
どこか懐かしい、昭和の香りがする作品。
行間からコーヒーの芳香が感じ取れ、やったことはないけど、豆から挽いて飲みたくなりました。モエ子がいれるコーヒーも飲んでみたくなります。
起承転結のテンポが良く、読んでいてとても楽しかったです。
ちなみに表紙は、サニーデイ・サービスの「東京」なんですよ。
2. ラブ・ケミストリー (喜多喜久)
理系の書く、理系の物語ですが、ファンタジー要素がとても大きいです。
ラブ・ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 文庫
化学者の卵で、人生で彼女がいた事がない藤村は、化学において特殊な能力を持っています。
しかし、初恋をし、女性に気を取られるうち能力を失ってしまう。
そんな時に現れた死に神のカロン。
ある人からの依頼で、藤村の恋を成就させ能力を取り戻す為に動き出します。
人生初の恋の行方は?人生をかけている化学界での活躍は?と最後は二択になるのかと思いきや、まさかの展開に!
好き嫌いはあるかもしれませんが、個人的には納得の結末で面白かったです。
カロンという存在が非日常的で、無茶ぶりがあったりしてラブコメになっています。
化学の知識がミステリー的な仕掛けを担っているわけではないので、ミステリーを期待すると少し肩透かしだとおもいますが、ラブコメとしてみれば微笑ましいのではないでしょうか。
一応、ダイアローグの「私」が誰なのか考えさせられる所に、ミステリー要素は十分あるので、私は面白かったです。
化学系大学院生、有機合成の研究室の日常を垣間見ることができるのは面白いし、読んでいて楽しかったです
理系の世界を知りたい人にはいいかもしれません。
ところで、真下さんと上杉くんは上手くいきそうだけど、岩館さんと百瀬くんはどうなったか気になります…
(笑)
NO、1
1. ぼくは明日、昨日のきみとデートする (七月隆文)
時空ものは今までもよく読んできたけどひと味違いました。
初めて読むと、間違いなくもう一度読みたくなる内容です。
片想いからアプローチ、付き合う流れはかわいらしいです。
しかし高寿と愛美の関係が、愛美の秘密によってバランスを崩します。
愛美にとって最後のことであっても、高寿とはその感情を共有できない、それでも気丈に振る舞うのがなんとも言えません。
冒頭の「また会えるよ」の意味を色々考えてしまってとても切ないです。
毎日がリセットされて、1日ずつ遡っていく愛美ちゃんの気持ちを想うと切なくなりました。
「非情な運命で、幸せなのは同い年の今」
「別れるまでの一日一日を大事に過ごそう」
「未来に進む高寿と過去に戻る愛美」
二人の運命の秘密が分かってからは一気に読み終わり、また最初から愛美の気持ちを辿るように読み返しました。
一緒に年を重ねていける展開にならないのが切ないです。
彼女の時系列がどうなっているのか頭で考えた時に難しく感じるかもしれませんが、それ以上に自分にとっての最初が相手の最後というのが本当に切ないです。
京阪の駅に馴染みのある人は、もっと違う楽しみもあるかもしれませんね。
若い人には絶対、大人になってからでも読んで欲しい一冊です。
福士蒼汰 小松菜奈『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』映画化
まとめ
これらのランキング、感想はあくまでも私個人のものです。
ここに挙げた本も、挙げられなかった本も、多くの人に読んで欲しい本がまだまだ沢山あります!
人に勧められたから、表題が気になったから、理由は何でも構ません。
本が読みたくなったら、本屋にふらっと立ち寄ったら、ぜひ色んな小説を手に取ってみてくださいね!!
絵本おすすめ(大人向け)ベスト30+2!必ず一人で読んでください
(記事:花浜匙)